2014年8月20日水曜日

社説・コラム:8・19付2県紙

◆◆<社説>辺野古掘削開始 自然破壊恥じぬ政府の厚顔 8・19 琉球新報

 ・一部を引用

 

 あの美しい海に、ついに穴がうがたれた。

 18日、米軍基地新設に向けた調査のため、名護市辺野古の海の掘削を防衛省が始めた。県民の民意を踏みにじる反民主主義、自然環境を破壊して恥じない反理性主義と、いかなる意味でも許されぬ暴挙だ。遺憾だという常套句(じょうとうく)では足りぬ、強い憤りを禁じ得ない。

  辺野古沖、大浦湾に通ったことのある者は分かるはずだ。あの透き通った水とサンゴの美しさは何ものにも代え難い。まして絶滅危惧種のジュゴンが前日も近くを泳いだばかりだ。作業におびえて近づけなかったとおぼしい。そこに強権的に穴をうがち、平然としていられる政府の厚顔は信じがたい。

  その命湧く海の貴重性は専門家がつとに指摘している。日本自然保護協会はわずか10日の調査で36種の未記載種、25種の日本初記録の甲殻類を発見した。シャコ、ナマコ、海藻と他にも初記録は枚挙にいとまがない。世界で他に報告のない大規模なアオサンゴ群集があり、サンゴ礫(れき)が付着する洞窟も日本初確認だ。その生物多様性に鑑みれば、本来なら政府が率先して海洋保護区に指定すべき海だ。その海をどうして破壊できるのか。

  安倍政権には、11月の知事選の前に工事を進捗(しんちょく)させ、既成事実化を図る狙いがあるとされる。「抵抗しても無駄だ」と県民に無力感を植え付けるのが狙いなのだろう。

  沖縄側が無力感にとらわれる必要はない。沖縄に対し日米両政府が取っている姿勢は近代以前の専制君主的反民主主義だ。沖縄は民主主義的手段で民意をはっきり示し、国際社会に堂々と訴えればよい。国際社会の良識がどちらを支持するかは火を見るより明らかだ。

  沖縄の海に穴をうがつか否か、沖縄の土地に軍隊を置くか否か、決めるのはウチナーンチュである。

 

 

◆◆社説[辺野古にジュゴン]工事やめ調査やり直せ 8・19 沖縄タイムス

 ・一部を引用

 

 餌場に向かおうとしていたのだろうか。特徴ある胴体と尾ひれ。海面に浮かび上がるその姿は、何かを訴えているようにも見える。

 

 米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古への新基地建設で沖縄防衛局は18日、キャンプ・シュワブ沖のボーリング調査を本格的に開始した。

 その前日だった。国の天然記念物ジュゴンとみられる生物が辺野古の東方約5キロの沖合で目視された。共同通信の記者がヘリコプターで上空から確認した。専門家は「ジュゴンに間違いないだろう」と話している。

 ジュゴンをはじめ辺野古・大浦湾の生物多様性は、多くの研究者が評価する。日本自然保護協会によると、国の環境アセス終了後も甲殻類などの新種や国内初記録類の生物種の発見が相次いでいる。生物多様性は、大浦湾のマングローブ林や干潟、砂場、泥場、藻場、サンゴ群落など異なる生態系が一体となった環境に支えられている。この貴重な環境を埋め立てで破壊するのは、愚行である。

 環境省は沖縄のジュゴンを絶滅の恐れが極めて高い「絶滅危惧1A類」に指定している。同省はまた、ジュゴンが生息する辺野古沖などを生物学的な観点から「重要海域」として選定した。

 10年に名古屋市で開かれた生物多様性条約締約国会議では、「脆弱(ぜいじゃく)な生態系への悪影響を最小化する」「絶滅危惧種の絶滅・減少を防止する」などの行動計画が採択された。現在、辺野古の海で進められている埋め立て工事は、これと相反するものであり、続行すれば国際社会からの批判は免れない。

 

 

 

◆[大弦小弦]暑い夏を盛り上げる夏の甲子園は、8・19 沖縄タイムス・コラム

 

 炎天下、名護市辺野古への新基地建設に反対し、ひと月以上も米軍ゲート前で座り込みを続ける人々にも18日、やっと大量の援軍が現れた。「島ぐるみ会議」の168人がバス3台で那覇から駆けつけた

 

 連日、強烈な日差しの下で仲間を鼓舞し、唇がただれた平和運動センターの山城博治議長の声にも力が入った。「皆さん! 我々と一緒に声を上げましょう」。巨大な国家権力を前に、ともすれば弱気になりかける心に勇気を注いだ

 

 同じ日、沖縄防衛局は掘削作業に着手し、青い海の底に杭(くい)を突き立てた。だがこれは序盤戦。これから山を削り、ごう音を上げて大量の土砂で多くの命を生き埋めにする

 

 基地だらけの小さな島に、今また新たな基地を造る工事は「観光立県」の入り口となる空港整備の工事とは全く違う。心の漠たる違和感を何らかの形で示せば、勇気の輪が広がっていく。(儀間多美子)

 

 

                       

 

 

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